ポセイドン、突然の訃報に接する

「久しぶり~元気にしてた?」

えーっと・・・どちら様でしたっけ・・・

会社用スマホにかかってきたガラガラでしわがれた声の主。
本当に誰だかわかりませんでした。
所属と名前を聞いてようやくピンときます。
声、全然違うじゃん。

「ごめんねーちょっと体調崩しちゃってさ。今入院してるんだ」

時折せき込みながら必死に声を出している感じはしました。

要件は案件引継ぎ。
うちの会社ではよくあることなので何とも思いませんでした。
ただ、そのお客様、本社が関西だったのです。
なので本筋で言えば自分ではなく関西の担当者を割り当てるべきです。
本人にそう告げると

「いや、俺はお前にやってもらたいたいんだよ」

そこまで言われたら断れません。
自分がやりますよ。
根回しだって任せなさい。

普通の引継ぎは本人が間に入ってお客様をご紹介いただき、以降自分が対応します。
が、今回はメールでお客様の連絡先を教えてもらい、自分から初めましてとお客様に連絡を入れています。
今になって考えてみるとちょっと乱暴だったのですが、理由があったのですね。

リモートでしたが順調に商談は進み、無事受注。
淡々と手続きを進めます。
あれ?そういえば・・・自分が送ったメールに返信がない。
まぁいいか。
聞きたいことはあるけど急ぎじゃないし。

そして突然目にした訃報。
コロナ前ならもっと早く情報が入ってきたはずですが、出張続きと在宅勤務が重なってはどうしようもない。
流行り言葉で言えばこのナレ死のような感覚。
何で?つい最近までやり取りしてたよね・・・
知人の死って結構きついんだよ?わかってる?

結局、自分が最後に送信したメールと入れ替わりで亡くなったようです。

そうか、あの時既に相当つらかったんだな。
もう知らない人と話すのは面倒だったんだろうな。
だから自分に託そうって思ったんだろうな。

形見を受け取ってしまった複雑な気分。
このお客様、大切にするのでちゃんと見守っていてください。

コメント

  1. ココ より:

    知人の方のご冥福をお祈りします。
    その方にとってポセイドンさんは1番信頼して頼れたのですね。